「What is TOY?」は「おもちゃって何だろう?」をきっかけに、おもちゃの可能性を探る連載インタビュー。第1回は、 長年おもちゃについて研究・活動を続けている東京おもちゃ美術館 館長の多田千尋さんです。
外で遊ぶのが大好きな野球少年でしたが、学校ではコマに夢中。よく覚えているのは「コマ鬼」。鬼ごっことミックスして「鬼は手の上で回している間は追いかけることができる」とか、想像力をフル回転してルールを進化させていましたね。長男が小1の時に、2人で「バックギャモン」に開眼しました。ボードゲームも子どもの頃から好きでしたが、遊んでいると相手の人間性が見えてくるんですね。対戦を通して、息子とも相当な時間向き合いました。
東京おもちゃ美術館にもいろんなコマが
以前おもちゃを持って老人ホームを訪問していた時、挨拶もできなかったおじいさんが、汽笛の音がする「トレインホイッスル」というおもちゃを鳴らすと「上野に着いたんだよ!」と話し始めました。SLで青森から出稼ぎに来たこと、上野に着いたら人が多くて困ったことなど、昔の話がどんどん出てきた。その時「おもちゃはコミュニケーションツールである」という考えが明確になりました。おもちゃは記憶と紐付いた、人生を通して必要なものなのです。
手作り体験ができる「おもちゃこうぼう」には、切り絵のモビールがゆらゆら
全ての道具は何かを豊かにするためのものだとすると、おもちゃはコミュニケーションを豊かにし、人生を豊かにする、言わば「人生を楽しむための道具」。おもちゃに恵まれていることは大切なことだから、洗練された芸術性の高いもので取り囲んであげたい。おもちゃ美術館は、「おもちゃは子どもが最初に手にする芸術作品である」という理念から「美術館」と名付けています。でも、どんなおもちゃも自然のものにはかなわない。小枝や葉っぱ、石や砂……全ての感覚に働きかける、最も贅沢なおもちゃは自然物だと考えています。
絵本の読み聞かせも、親子で楽しむ「繰り返し」
赤ちゃんの目の前に積木を重ねると何回でも壊して遊ぶのは、 触ると形が変わって音がすることが楽しいんですね。あらゆることが人生初体験でワクワクすることばかりの3歳未満児は、繰り返しを楽しむ天才です。その時期にとても大事なのが「パパやママの手・顔・声」で遊ぶこと。子どもにとって究極のおもちゃは、それが合体した「いないいないばあ」です。最高のいないいないばあ、お子さんと繰り返し研究してみてください。
「赤ちゃん木育ひろば」では、木を全身で体験できる